2007年03月18日

【書評】 タイムカプセル 

折原節は健在なれど...

結局のところ、良質な謎解きミステリーというのは、いかに上手く騙してくれるか、いかに伏線の張り方が上手いか、ということに尽きるわけで、知的ゲームとして、どれだけ楽しませてくれるか、というのが最大の評価ポイントになるのでしょう。本書は、その点から見ると、やや物足らない、というのが正直な感想です。

三人称と一人称を使いわけたり、ジャック・リヴェット監督の諸作のように「繰り返し」が好きな折原節は、本書でも健在で、それはそれで楽しめるのですが、逆にこの作者に慣れ親しんだ読者にとっては、そこに注意を払わなければいけないのが分かっているので、その部分を読む時は、騙されまい、と自然と身構えてしまうのです。本書で初めて、この作者を読む方だと印象が違うかもしれませんが、つまり、個人的には伏線の張り方にデジャヴュ感が付きまとい、トリックその物や「犯人」の正体も含めて、袋とじになっているラストも、あまり驚きをもって読むことができませんでした。ことに、言葉の解釈の違いによる誤解、というのならともかく、「掘った芋いじるな」と同レベルのことが、トリックに使われているのは、いささか感心しません。このようなことをしなくても、主要登場人物の一人の描写で、暗示としては十分事足りていると思います。

要するに、知的ゲームとしては、不満が残ってしまいました。YA向けだというのは、あまり情状酌量にならないと思います。『Xの悲劇』や『Yの悲劇』などは、中学生が読んでも、面白いのです。残念ながら、先日読んだ『乱鴉の島』の有栖川有栖もそうですが、折原一も初期の作品の方をお勧めします。

(hacker)

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タイムカプセル
  • 著:折原一
  • 出版社:理論社
  • 定価:1470円
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[ 書評コミュニティ【ホンスミ!】 ]   2007年03月23日 21:16

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