2007年02月20日

【書評】 知ってトクする確率の知識 成功するにはワケがある! 

「雑学の宝庫なれども、もう一歩!」

 「数学を勉強したって何の役に立つの?」とは子供が一度は口にするセリフでしょうか。中でも確率は、数学の中でも義務教育から大学の教養まで、どの段階でも「最後にちょっと」という扱われ方をすることが多いと思いますので、この問の格好の餌食かもしれません。

 本書は、著者が文系出身というだけあって、非常に分かりやすい文章で確率を復習することから始まります。そして、「ジャンケン必勝法」「お見合いで気に入った女性と結婚する方法」「なぜ二度あることは三度あるのか?」などなど、生活に密着した楽しい例題が、確率によって説明されていきます。

 例の選び方が身近で親しみやすく、取り分け男性諸氏には非常に興味をそそるものになっていると思います(そういう読者層を想定しているのでしょう)。なるほど!と思わず膝を打ってしまうこともしばしばではないでしょうか。

 ただ、雑学としてはすこぶる面白いのですが、「成功法則」とストレートに結びつけるのは、やや飛躍を感じてしまいました。当たり前のことですが、現実世界では、数学「だけ」ではうまくいかないからです。上の例で言えば、実際のお見合いでは女性にも断る権利がありますので、前提条件から成り立ちません。

 著者もこういった限界については多少触れてはいるのですが、実際には「個人の自由意志」が大きな影響力を持っているという点について、やはり確率から説明することもできるのですから、その点に一章を充てるくらいの構成にしてもよかったのでは、と思います。

 例えば、「納豆を食べてダイエットに成功した」(笑)ということが連続して5人成功したとします。さて、この場合のダイエット法が本当に有効な確率はどのくらいだと思いますか? 正解は、54.9%以上(信頼区間95%)です。例え捏造が無くても(笑)、大して信用できる結果ではないのです。

 また、本書で扱う確率の範囲からは外れるかもしれませんが、「デンタルフロスを使って歯を磨く人は、肥満が少ない」という疫学調査があります。この研究は、数学的に検討すれば、どこから見ても正しいものです。しかし、この結果から「デンタルフロスでダイエットができる!」なんていう結論を導き出す人はいませんね。

 これは無論のこと、きちんと歯を磨く人は体全体の健康にも気を遣っている確率が高いのだから、自然と肥満者も少なくなる…という「個人の自由意志」が影響して、まったく関係ない因果関係が導き出されたに過ぎません(これを「偽りの関係」と言います)。

 残念ながら世の中に氾濫する情報は、特に「健康情報」は、この程度の価値しかないことが多いものです。このような「嘘」を見破るためには、数学を勉強することで、論理的思考を身に付けることが大いに役に立ちます。しかし、同時に数学「だけ」ではいけない、ということも分かるようになる…というのが、最初の問いへの答えにもなるでしょうか。

 いっそのこと「数字遊び」に徹した方がすっきりしたような気がします。「成功するにはワケがある!」という副題を付けるには、ちょっと苦しいかな、という印象ですが、飲み会の話題を仕入れたい、という向きには絶好の、楽しい小話満載の一冊であることは間違いないと思います。


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古書店には売らない度 ★★★☆☆
これは使える!度   ★★★★★
心が揺さぶられます度 ★☆☆☆☆

(シルフレイ)

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  • 著:野口哲典
  • 出版社:ソフトバンククリエイティブ
  • 定価:945円(税込み)
知ってトクする確率の知識 成功するにはワケがある!
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書評データ


『【書評】 知ってトクする確率の知識 成功するにはワケがある!』についての意見(トラックバック)

嬉しいことに、知らないことがいっぱいある。「確率」という数学の分野が飛躍的に向上
[ みかん星人の幻覚 ]   2007年02月25日 23:47

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