2007年01月24日
【書評】 世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す
「空回りする正義感」
邦題はすごいことになっていますが、原題は「Making Grobalization Work」です。題名だけで飛びついた方は、びっくりするでしょうね。著者は決してグローバリゼーション自体を否定しているわけではなく、皆が幸せになる別のグローバリゼーションが可能だ、と主張しているからです。もっとも、アフリカの貧しい農民の生活に涙する一方で、補助金漬けの日本の農産物ばかり買うということが、まさにスティグリッツが非難する「悪い」グローバリゼーションですから、そういう人にこそ読んでもらいたい!という意図があったとすれば、邦題を考えた編集者に拍手です。
ただし、スティグリッツの主張の実現性については、大いに疑問を感じました。経済学はまったくの門外漢ですので著者が正しくないと判断したからではありません(むしろ素晴らしいご提言の数々だと感じます)。そうではなくて、本書の9割以上は、IMFなどの国際機関やブッシュ共和党がいかに間違っているかという記述に充てられているからです。
しかも、その書き方がどうも尋常ではありません。似たような話が延々と、執拗なこだわりをもって続きます。あれもこれも間違い、なんでこんなこと分からないの?…という調子です。繰り返しが多く、網羅的で冗長。「10分の1に要約せよ」という教材に使えそうです。ちなみに本書だけでなく、スティグリッツは何年も前から彼らに罵詈雑言を浴びせていることで有名なのですね。
確かにスティグリッツが正しそうです。そして次の大統領選で民主党が勝利し、希望どおり新政権の中枢に迎えられたとして、それでグローバリゼーションが正しい方向に向かうのでしょうか。新しい政策が有効に働くには、無茶苦茶にけなされている国際機関や、巨大野党となる共和党の一定の協力が不可欠です。しかし、これだけ叩かれ続けた人々が、どのように反応するかは明白です。
肝心の「提言」が(数ページの分量しかないのですが)、煎じ詰めれば「良心や正義に頼る」というものばかりですから尚更です。「あんたたちは無知無能な上に、良心も正義感もない!」と罵倒しているようなものですから、たとえ理性では正しいと納得しても、スティグリッツの言うことだけは聞くまいと反応する方が自然だと思います。
そもそも、著者は97年〜00年まで世界銀行の上級副総裁だったわけですが、この時期の世界銀行が素晴らしい活動をしていたのでしょうか? IMFと似たり寄ったりでは? 現在「悪い」グローバリゼーションがはびこっている責任の一端は、指導的立場にいたスティグリッツにもあるはず。まさか「自分の言うことを世銀の他のスタッフが聞かなかったから」と仰るつもりでしょうか。
自分の非を認めるのは難しいのに、他人には自説を強要。どうも一方通行の思考パターンで、人間には感情があって反応するという想像力に乏しいようです。知能の高い人に有り勝ちな社会性の欠如と言ってしまえばそれまでですが…。著者の成育歴を知りたい、というのが素直な感想です。
他の著作も読みたい度 ★☆☆☆☆
古書店には売らない度 ★☆☆☆☆
これは使える!度 ★☆☆☆☆
心が揺さぶられます度 ★☆☆☆☆
(シルフレイ)
この本の感想(書評)を書いてみませんか? 詳細はこちらです。
★この記事が参考になったら、クリックしてください
『【書評】 世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』についての意見(トラックバック)
ウシ以下の生活を強いられる人がいる世界は、やはり歪んでいる ★★★★★
センセーショナルなタイトルだが、原題の『MAKING GROBALIZATION WORK』より内容を的確に表現しているのだから、皮肉なものである。
科学ダ1
[ 本虫のふん ] 2007年01月28日 17:53



