2006年11月24日

未来のきみが待つ場所へ 〜先生はいじめられっ子だった〜 

「オール1先生」落ちこぼれの子ども時代から教師になるまで

テレビや新聞で、落ちこぼれの子ども時代から教師になるまでが紹介され、衝撃をよんだ「オール1先生」の物語です。

小学校低学年から勉強も学校も苦手で、友達の陰湿ないじめや父親の暴力と貧困に苦しみ、優しかった母親を亡くし、両親の実の子ではないと知り、将来に何の希望も持てずに自殺も考えた宮本氏。

しかし、偶然に見たアインシュタインのビデオから物理学に目覚め、さまざまな人との貴い出会いを経て、努力を重ね、高校教師として母校の教壇に立つまでのノンフィクション。

どんな小さなことでもいいから誰かに褒めてほしかった。一緒に頑張ってみようと先生に声をかけてほしかった。……そんな思いを今の子どもたちにはさせたくないという気持ちから、自身の体験を明るく穏やかに語り、「夢を持つ大切さ」と「出会いの素晴らしさ」を伝えます。

まわりから見れば小さなことかもしれませんが、本人にとっては胸が張り裂けるほどの悩みをたった一人で抱えている子どもたち。自分の可能性をあきらめる子どもたち。そんな子どもたちの気持ちにより添い、必ず大きな励ましになる内容です。

子どもはもちろん、親や教師をはじめ大人にも、ぜひ読んでほしい1冊です!


まえがき  ―― 十代のみなさんへ ――

 ぼくは愛知県にある豊川高校という学校で、数学の教師をしています。
 まだまだ、教師としては新米ですが、毎日生徒たちと向き合って、充実した学校生活を送っています。 
 ところで、みなさんは、「学校の先生」という言葉を聞いて、どんな人のイメージが浮かんできますか?
「自分たちの知らないことをたくさん知っていて、子どものころから頭がよくて、小学校や中学校のテストではいつもいい点数を取り、一流の大学に進んで、優秀な成績で卒業した人」
 おそらく、こんな人物像を頭に浮かべるのではないでしょうか。
 たしかにみなさんが毎日、学校で教わっている先生方は、教師という仕事につくために必要な努力をかさね、勉強をつんできた優秀な人たちばかりだと思います。
 だけど、日本中にたくさんいる先生たちのだれもが、子どものころから成績がよかったわけではないはずです。それほど勉強が好きでなかったり、一生懸命勉強しても、なかなか成績があがらなかったり、あるいは勉強ができなかったりした人が必ずいるはずです。
 なぜ、ぼくが自信をもってそんなことを言うのか?
 じつはみなさんと同じ年のころ、ぼくは勉強が大嫌いだったのです。もちろん、成績は最低も最低で、授業中は先生の言っていることが、さっぱり理解できませんでした。というよりも、先生の話など、まったく聞いていなかったといった方が正しいかもしれません。
 では、小学生時代のぼくはどのくらい、勉強ができなかったのか?
 この本を読んでいるきみたちの中で、算数の九九がスラスラ口に出てこないという人は、まずいないでしょう。なぜなら、九九は算数の基本中の基本で、普通は小学二年生までにだれもが覚えてしまうものだからです。
 ところが、ぼくは中学を卒業するとき、九九が二の段までしかいえませんでした。言いかえれば、ぼくは小学二年生のころから、学校の授業にまったくついていけなくなっていたのです。
 初対面の人にぼくがこの話をすると、みんな必ずといっていいほど、信じられないような顔つきになります。そして、不思議そうにぼくを見ながら、
「よく、それで高校の数学の先生になれましたねぇ」
 と言うのです。まったくその通りで、子ども時代のぼくは、みんなの想像を絶する、けたはずれのダメ生徒だったので、まさか将来、自分が学校の先生になるなどとは、すこしも考えていませんでした。あらゆる職業の中で、自分とはもっとも無関係だったのが先生や学校というものだったからです。
 わからないから、勉強しない。勉強しないからますます何をしているのかわからなくなっていく。ぼくの学校生活は毎日がその繰り返しでした。
 たとえ、勉強がまったくできなくても、クラスにとても仲のよい友だちがいたり、放課後みんなで遊ぶのが大好きだったりすれば、まだ、学校に行く楽しみもあったと思います。でも、ぼくの場合はそんなこともありませんでした。
 みんなと遊ぶどころか、ぼくは低学年のころからクラスの中で「いじめ」の対象になっていたのです。よく、昼休みや放課後になると、ぼくはいじめっ子たちに取りかこまれていました。来る日も来る日も、クラスメートたちから、まるで虫けらやゴミくずのように扱われる。これが、どんなにみじめで苦しいことか、「いじめ」を体験したことのない人には絶対にわからないでしょう。
 しかも、ぼくの場合は、いじめにストップをかけてくれるはずの先生たちが、ぼくがどれほど苦しみ、おびえた日々をスゴしているのか、まったく理解してくれてはいませんでした。
 大人たちの助けを借りることのできない、子どものぼくにできることは、ただ黙っていじめに耐えることしかなかったのです。
ぼくは、いじめっ子たちはもちろん、先生も勉強もなにもかもが大嫌いになり、学校に行くことになんの意味も見出せなくなっていました。学校生活はぼくにとって、地獄そのものだったのです。
 その後も、学校生活や家庭環境はボロボロのまま、社会人になってもぼくの人生は不運や不幸の連続でした。
 しかし、人生はそう悪いことばかりがつづくものではありません。二十三歳になったとき、ぼくはまったく偶然にある運命的な体験をしたのです。
 それはアインシュタインとの思いがけない出会いです。
そして、心ある温かい人たちとの尊い出会いです。
 この出会いをきっかけにして、いずれは教師として戻ってくる豊川高校へ進学することになるのです。
 小・中学校の成績でみれば、ぼくはおそらく日本一の落ちこぼれ体験を持つ教師と言えるかもしれません。けれど、同時にぼくは勉強が大嫌いな子どもや、いじめに苦しむ子どもの気持ちが痛いほどわかる教師でもあります。

(講談社資料より)

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